Masaos spice talk 谷内雅夫のspiceエッセイ

ホテルオークラ福岡のレストラン情報誌「HAKATA spice」

MASAO's talk

ホテルオークラ福岡 総料理長 谷内 雅夫によるエッセイです。毎号、食に纏わるテーマで経験談や思いをつづります。

 私はクタクタに煮た野菜が好きである。オランダではよく肉の付け合わせにクタクタに煮た茶色いインゲンが出るが、これがすごく美味しい。見た目は悪いが、野菜の甘みが存分に味わえる。日本で野菜はシャキッとした歯ごたえのイメージが多いが欧州の感覚は正反対。フランス語で窒息という意味のエトフェは、鍋で野菜を窒息させる立派な調理法であり、イタリアンではブロッコリーをパスタソースにも利用するほど野菜の旨味を上手に引き出す。
 オランダ時代、従業員食堂で働くアフリカ系の人たちが茶色く焼いたピーマンのサンドイッチを食べていた。ソースも何もなくピーマンだけ。それが苦味を全て甘味に変えた格別な味だった。また、イスラム教徒のモロッコ人たちは日中断食を行うラマダンの期間があり、夕暮れになると早々に仕事を切り上げ、夕食を作ってみんな集まってワイワイと食べはじめる。悲壮感は全くなく、逆に祭りのように楽しむ姿。そのメニューはオリーブオイルを引いたバットにザク切り野菜と羊肉を入れ、塩をふり、そのままオーブンへ。野菜の正体が無くなるほどのクタクタ料理。それを手抜き料理だと思うか、丁寧に火入れした時短ならぬ時長料理と捉えるか。ビール一杯のためにあえて喉を乾かせるように、空腹という最高の調味料を携えた彼らにとっては、料理の手間よりも、仲間に時間をかける方が何倍も美味いという訳だろう。美味しさも人それぞれ。シャキシャキもクタクタも、自分が美味いと思うものが一番である。私も自宅で疲れた日には、鍋にキャベツとホロホロ鶏を放り込み、オリーブオイルを軽く回して弱火で放置という奥義をくりだす。

※このエッセイはレストラン情報誌「HAKATA spice」9-11月号に掲載しています。

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